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【COLUMN】1on1は意味がない? 運用ポイントを具体的なアジェンダ、事例から解説!

ヤフー株式会社が2012年から導入し、一躍話題になった「1on1ミーティング(以下:1on1)」。1on1とは、定期的に上司と部下が1対1で行う対話・機会のことで、上司はそこで部下の進捗を確認し、問題解決をサポートし、最終的にはその部下の目標達成と成長支援を行います。1on1は、優秀なエンジニアはじめ人材争奪戦となっているシリコンバレー発祥のカルチャーで、テクノロジーが発達した現代だからこそ、顔をつき合わせたFace to Faceのコミュニケーションを大切にする風潮から、グーグル、インテル、マイクロソフト、アドビシステムズなど、名だたるシリコンバレー企業が1on1を導入しています。

現在では、多くの会社で取り入れられている1on1ですが、意識的に運用をしないと単なる雑談になってしまうケースや実際に導入しているものの何を話してよいかわからない…という声も聞こえてきます。

そこで、この記事では、そんな1on1の成り立ちからメリットやデメリット、そして事例をもとに具体的な運用ポイントを解説。ぜひ、自社の取り組みの参考にしてください。

1on1とは

1on1とは、定期的に上司と部下が1対1で行う対話・機会のことです。評価面談と異なり、話す内容や実施頻度に特徴があります。ここからは、1on1の特徴やメリット・デメリットなどについて解説します。

1on1の特徴

上司との対話というと多くの方は「人事評価面談」を思い浮かべるかもしれません。しかし、人事評価面談は部下を「管理する」側面が強いのに対し、「1on1」は部下の成長を促します。例えば、1on1では部下の個人的なキャリアビジョンや今の仕事で悩んでいることなど、話す内容も部下自身のことを中心に話し合います。こうした対話を通じ、上司は部下の理解を深め、部下は自分の能力やキャリア、職場環境を見つめ直すことに繋がります。

1on1のメリット

1on1のメリットは、上司と部下との間で信頼関係をつくり、業務に対する悩みの解消やモチベーションの向上、成長を促せることです。1on1では定期的に15~30分程度ミーティングを行い、個人のキャリアビジョンや現状の目標、行動のすり合わせを行います。話す内容も仕事のことからプライベートのことなど様々です。上司と部下の対話を起点に相互理解が深まり信頼関係の構築に繋がったり、上司と部下の対話の量的・質的変化から安心感が醸成され部下の仕事へのモチベーションが向上したり、自分自身では気づかなかった示唆を上司から受けて部下の学びの機会になるなど、様々な効能があります。

1on1のデメリット

一方で1on1にはデメリットもあります。まず、1on1は定期的な運用が求められるため、上司部下双方の工数が増えるデメリットがあります。

そのデメリットに対しては事前に話すアジェンダを作成することや効果的な運用ルール、上司の応答技法やコーチングのスキルアップなどを検討し、改善を進めていくことで効果的な1on1運用に導くことができるでしょう。

注目されている背景

そもそも、なぜ今1on1が注目されているのでしょうか。その理由の一つに、「VUCAの時代」があげられます。

VUCAの時代とは、

V:Volatility「揮発性」

U:Uncertainty「不確実性」

C:Compexity「複雑さ」

A:Ambigity「多義性」

の4つの頭文字をとった言葉で、予測が難しく、複雑で方向性が見えにくい現代の状況を示しています。会社組織も同様に様々な価値観が合わさって一つの集団を作り上げています。VUCAの時代だからこそ、組織としての強さが重要になってきている背景から、企業はミッション・ビジョン・バリューなどの共通の価値観やコア・コンピタンスなどを言語化し、組織の方向性をすり合わせています。

1on1は定期的にミーティングを繰り返し、都度、戦略・方針の伝達や部署のミッション・方向性の共有、大切にしている価値観などのすり合わせもします。こうしたやりとりを行うことで1on1はVUCAの時代にあっても方向性を見失わずに、時には修正を行いながら、前に進むことが可能になります。

1on1にまつわる本

最近は、1on1を紹介した書籍も出版されています。ここからはそのうち2冊ほど、ご紹介します。

ヤフーの1on1 部下を成長させるコミュニケーションの技法

1on1を最初期に導入したヤフー株式会社の事例をまとめた一冊。本書は理論の説明だけでなく実践内容の紹介に重きを置いています。具体的に1on1の実践例を漫画にて紹介しているため、非常にわかりやすくなっています。今、1on1で悩んでいるというマネージャーにおすすめです。

シリコンバレー式最強の育て方

企業向けに研修を行う株式会社サーバントコーチで代表取締役を務める世古詞一氏がシリコンバレーで行った取材をまとめた一冊。メソッドの紹介やなぜ1on1が必要なのか詳しくまとめているため、理論も実践も学びたい方におすすめです。

1on1の運用ポイントとは? 事例をもとに解説

ここからは、実際に1on1を取り入れている企業をご紹介します。事例と合わせたポイントも解説しますので、ぜひ導入の参考にしてみてはいかがでしょうか。

ポイント①:ガイドラインを策定し、目的を全社で共有する

事例内容:ヤフー株式会社

ヤフー株式会社は週に1度30分間の1on1を導入しています。その背景には、「経験学習」と「社員の才能をと情熱を解き放すこと」という2つの考え方がベースになっています。前者は仕事での成功や失敗から学びを得ること、後者は部下自身がまだ気付けていない潜在能力を引き出すことが目的になっています。

事例のポイント

週に1度30分間の1on1を行う場合、部下のマネジメント数が多くなるにつれ、時間の捻出が難しくなります。しかし、全社的に1on1の目的を共有することで、1on1を単なるミーティングの一つとして捉えるのではなく、「必要な時間」と捉え直すことができます。こうした継続的な取り組みを行うからこそ、長期的な成長につながるのではないでしょうか。

(引用:「1on1ミーティング」で強い組織をつくる 人材育成のための部下とのコミュニケーション

ポイント②:時間は短くても、高い頻度で実施する

事例内容:クックパッド株式会社

クックパッド株式会社は、振り返りの習慣として週に1回15分の定期個人面談を実施しています。もともと少人数のチームや個人で仕事を行うことが多かったため、チームに活気をもたらしたいと実施されました。頻度は当初の月1回から現在は週に1回となり、始める時間と場所も固定されています。また、あらかじめ質問する内容をピックアップしたり、会を重ねたりするとすぐに本題に入れるため、今ではすぐに深い話し合いができるといいます。

質問例

  • 仕事のブロッカーはありますか?
  • いまのチームのやり方、どう思いますか?
  • 最近、試してみたい技術はありますか?

事例のポイント

クックパッド株式会社の場合、頻度と時間の固定が大きなポイントです。特に時間を固定しておくことで毎週のようにミーティングを行い、1on1が習慣化します。これにより緊張することなく、自然体で話す習慣が身につきます。特に、1on1は評価面談とは違い、部下自身の内面や課題にフォーカスします。質問例にあるような「仕事のブロッカー」を毎週棚卸しすることで、課題解決プロセスの短縮につながります。まさに「報連相」の場として、1on1が機能しているのではないでしょうか。

(引用:週1回 × 15分でチーム変革!事業を成長に導くクックパッドの振り返り

ポイント③:上司側のスキルを高める

事例内容:株式会社TMJ

株式会社TMJは、現場の管理者層に向け、半年間の間月に1~2回、30分〜1時間のミーティングを実施しています。テーマは対象者が自由に設定しています。実際に導入したこと対象者の行動変容につながったり、メンバーの状態悪化を早期に察知できたりといった効果が見られています。その一方で職場環境の関係で1on1は義務ではなくあくまで「推奨」のため、1on1を実施しなかったりといったことも見られていたようです。

事例のポイント

1on1は上司側にかなりのスキルが要求されます。もし、このスキルが不足してしまうと上司が部下の答えを誘導したり、部下が上司に話をしたくなくなったりといった問題が発生してしまいます。また、マネジメントする人数が多くなる場合、普段の業務への影響も大きくなってしまいます。そのため、コーチング研修や、マネージャー陣の情報共有などを行うことも必要になるのではないでしょうか。

まとめ

1on1は、上司と部下が定期的に目標を振り返り、お互いの認識をすり合わせていくことで納得して業務を遂行できます。しかし、ただ取り入れただけではうまく機能せず、制度として不十分な結果に終わることも考えられます。そのため、運用しながら改善したり、上司側のスキルを高めたりといったことを繰り返し、徐々に1on1を効果的なものにしていくことが求められます。

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