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【COLUMN】<事例から学ぶ>ティール組織を取り入れている日本企業5選

従業員が自走し、高い生産性が期待できる組織モデル「ティール組織」。日本でも2018年に出版された『ティール組織 ー マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』をきっかけに、多くの企業が注目をしています。

しかし、ティール組織は日本国内の事例が少なく、海外の事例をもとに語られることも少なくありません。そのため、導入後のイメージがつきにくく、あまり理解が進んでいない経営者・人事責任者の方も多いのではないでしょうか。

この記事では実際にティール組織を取り入れている日本企業を紹介し、成功のエッセンスを探ります。

ティール組織とは?

ティール組織とはメンバーそれぞれが組織の目的に向かって行動し、成長し続ける組織のことです。上司や部下といった階層はなく、メンバー一人ひとりが意思決定を行い、ルールや仕組みそのものを変化させていきます。

ティール組織に至る5段階のフェーズ

ティール組織は「進化型」と称されるように段階を踏まえ到達するものと考えられています。そのため、ティールに至るまでには以下の段階を経験する必要があります。

1.レッド(衝動型)組織トップによる支配的なマネジメント
2.アンバー(順応型)組織役割が明確化された上意下達のマネジメント
3.オレンジ(達成型)組織目的のために手段を最適化する実力主義のマネジメント
4.グリーン(多元型)組織実力主義に加え、組織の多様性を重視するマネジメント
5.ティール(進化型)組織目的達成に向け、自発的に成長していく組織

ティール組織には上司や管理職といった役職が置かれていないことが多く、メンバーそれぞれに自走する姿勢が求められます。そのため、マネジメントといった概念はなく、メンバーが一見自由に動きつつも、組織の目的に合致している様子は、ときに「生命体」と表現されています。

ティール組織を構成する「3つの要素」

とはいえ、既存の組織をいきなりティール化しようとしても組織は機能しません。ティール組織には「3つの要素」が必要だからです。

  1. セルフ・マネジメント(自主経営)
  2. ホールネス(全体性)
  3. 組織の存在目的

ティール組織はメンバーそれぞれに権限委譲されており、自ら目標を設定し、動機付けを行う必要があります。そのため、自分で物事を考える「セルフ・マネジメント」や、自分の長所を発揮するための「ホールネス」、そして自分がなぜこの組織に属しているのかを確かめるための「組織の存在目的」といった3つの要素が欠かせません。

これらの要素を兼ね備えていくことで組織が進化し、ティールへと近づいていくでしょう。

ティール型組織を導入している日本企業4選

ここからはティール組織を導入している日本企業の事例を紹介します。

株式会社ネットプロテクションズ

株式会社ネットプロテクションズはテクノロジーを活用して商取引を円滑化することを目指す「Credit Tech(クレジットテック)」企業です。2002年より後払い決済サービス「NP後払い」の提供を開始し、2014年には「NP掛け払い」、2017年にはカードレス決済「atone」をリリースしています。

同社はティール組織実現のため、人事評価制度「Natura(ナチュラ)」を取り入れています。この評価制度は趣旨を「報酬の適正配分」から「人材の育成・成長支援」へのシフトを目指し導入されたもので、「マネージャーの廃止」「360度評価」「ディベロップメント・サポート面談」といった制度を導入しています。

この他、ネットプロテクションズはティール組織実現に向け、主業務とは別に想いのある業務に20%の時間を割く「ワーキンググループ」なども導入しており、組織としても成長し続けています。

出典:ネットプロテクションズ、マネージャー職を撤廃! ティール組織を実現する新しい人事評価制度「Natura」

株式会社ヤッホーブルーイング

株式会社ヤッホーブルーイングは「よなよなエール」や「僕ビール、君ビール」といったクラフトビールの製造および販売を行っている企業です。特に「よなよなエール」は1997年の発売後から徐々に人気を集め、現在はコンビニやスーパーなどで手軽に本格ビールが飲めるとして多くの方に楽しまれています。

同社はティール組織実現に向け、ミッションの定着化と組織のフラット化に取り組んでいます。特にヤッホーブルーイングでは小規模なチームを作り、その中で意思決定やコミュニケーションが行われます。また、部門横断的なプロジェクトも行われ、メンバー一人ひとりが組織のミッション実現に向けて活発に行動します。

こうした取り組みにより、ヤッホーブルーイングはビール業界を牽引する存在に成長しています。

出典:[報告]ヤッホーの井手社長に聞くティール組織の作り方

株式会社ガイアックス

株式会社ガイアックスは「Empowering the people to connect 〜人と人をつなげる」をミッションに創業し、現在はソーシャルメディアサービス、シェアリングエコノミーといった事業を展開しています。

同社はフリー・フラット・オープンを掲げ、議事録から事業部の独立採算といったところまで、個人の裁量を最大限に発揮する仕組みを採用しています。また、メンバー一人ひとりの個性や価値観を発揮するために「ライフワークミッション研修」といった取り組みも実施しています。

こうした取り組みによって自発的に新規事業が立ち上がり、現在、同社はビルの運営からソーシャルメディアマーケティング、そしてITサービスの受託開発などさまざまな事業が展開されています。

出典:ティール組織の事例紹介。日本と海外の3社と変化の過程を解説

株式会社ソニックガーデン

株式会社ソニックガーデンは「納品のない受託開発」として月額定額制で企業のシステム開発を支援する企業です。同社は「納品をなくせばうまくいく」という仮説のもと、月額定額の顧問としてシステム開発をサポートしており、現在は様々な業種のシステム開発を支援しています。

同社は「管理のない会社経営」を目指し、セルフ・マネジメントの実践に取り組んでいます。そのため、部署や上司、管理職がおらず、自分の裁量によって仕事を行っています。また、1on1の実践や「ザッソウ」といった雑談の推奨を行い、メンバーの心理的安全性を確保する取り組みも行なっています。

出典:「ティール組織」日本における事例の可能性 〜 ソニックガーデンはティール組織だったのか?

株式会社オズビジョン

株式会社オズビジョンは「Be a big fan」というミッションのもと、ポイントモール「ハピタス」や決済サービス「ポレット」といったサービスを手がけるベンチャー企業です。

同社は理念の追求に向け、「自立型勤務制度」を導入し、時間や場所に関係なく働くことが可能です。これにより、メンバー一人ひとりに自律的な働き方が求められています。

出典:「ティール組織」に到達する方法とは?失敗から学び、終わりなき改革に挑む組織

他社事例から、成功のエッセンスを学ぶ

ティール組織は目的の達成に向け、メンバーが自走できる一方で、責任の所在が不明確になったり、組織を急激に成長させようとすると既存社員との軋轢が生じる可能性もあります。組織運営モデルには正解がなく、どんなものもメリット・デメリットが存在するため、経営者はまず、自社の状況を適切に把握し、自社にあった組織開発モデルの導入が不可欠です。

HR INSIGHTではヒアリングをもとに企業の制度設計も行っています。組織運営に課題を感じている経営者・人事責任者の方はぜひ、下記ページからお問い合わせください!