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【COLUMN】オンボーディングで社員を定着化させる4つのプロセスとは。

新入社員を対象に行う育成プログラムとして、「オンボーディング」が注目を集めています。新卒だけでなく、中途入社社員にも必要なプロセスであり、入社後いち早く組織に定着させ、早期に戦力化できるメリットがあります。

ここでは、オンボーディングのメリット・デメリットや具体的な実施内容、また実施の際、具体的にどのようなプロセスを検討していけばよいかを解説します。

オンボーディングとは

まずはオンボーディングの概要、注目されている背景、OJTとの違いについて解説します。

オンボーディングの概要

オンボーディングとは、新入社員がいちはやく組織に慣れるように行う教育プログラムのことです。もともと飛行機や船に乗っていることを意味する「on-board」が語源にあり、新しい乗組員がいち早く現場に慣れるようサポートする意味から派生して、新入社員の定着施策として使用されるようになりました。業務の進め方や必要な知識、企業のルール・文化などを早期に身に付け、組織に慣れてもらうことを目的として実施します。

オンボーディングが注目されている背景

オンボーディングが注目される背景には、主に次の2つの理由が挙げられます。

新入社員の早期離職

2020年10月に厚生労働省が公表した『新規学卒就職者の離職状況(平成29年3月卒業者の状況)』では、新規学卒就職者のうち、大卒は32.8%、高卒は39.5%となっており、多くの新入社員が3年以内に離職しています。企業としては新入社員に「長期で勤めてほしい」「戦力となって会社の成長に貢献してほしい」という思いがあることでしょう。そうした早期離職の解決策としてオンボーディングが注目されているのです。

転職希望者の増加

パーソルキャリア株式会社の『doda転職求人倍率レポート(全国)』によると、2021年6月の転職求人倍率は1.86倍であり、転職希望者も増加傾向にあります。中途採用者は、社会人経験・業務経験があるという理由から導入教育がおろそかになっている場合もあるため、、オンボーディングの重要性が高まっています。

OJTとの違い

オンボーディングと似た用語に「OJT」があります。OJTは、「Off-The-Job Training」の略で、先輩社員がトレーナーとなり横について、業務を習得することですが、オンボーディングとOJTにはどのような違いがあるのでしょうか。

目的の違い

オンボーディングとOJTの違いは、その目的にあります。OJTは、新入社員が学んだことをその場で実践し、「即戦力化すること」を目的としています。

その一方で、オンボーディングは、「即戦力化すること」も目的の一つですが、それよりも「情報の提供」や「価値観の共有」に比重を置いています。情報、価値観とは、社内のルール、企業のミッション・ビジョン、マネジメント層の業務スタイル・人間性、組織の人間関係など。こうした情報がないと、新入社員は業務の仕方や社内でのコミュニケーションが手探りになってしまい、本来の業務以外に多くの工数をさいてしまい、持ち味を出すことができません。オンボーディングで企業の情報や価値観を早期に伝えておくことで、新規採用者が組織の一員として、自分らしさを発揮して活躍できます。

担当者の違い

また、「担当者」の違いもオンボーディングとOJTの大きな違いです。OJTは新規採用者が実際に配属される部署単位で担当者します。これに対して、オンボーディングは、他の部署や企業全体が担当します。

OJTは部署によって新入社員に対するサポート体制にばらつきがありますが、オンボーディングは部署横断、企業全体で最適な育成施策を考えることからサポート品質にムラがなく、対象者の能力を早期に引き出すことができます。

結果として育成期間を短縮して、いち早く戦力として独り立ちすることにつながります。

オンボーディングのメリット

オンボーディングには、企業側・社員側(新規採用者本人)それぞれに以下のようなメリットがあります。

企業側のメリット

新規採用者の即戦力化

新入社員が会社の戦力となるには、早くて数ヶ月、遅くて数年とも言われています。未経験ならともかく、即戦力の中途社員でも会社に慣れるには時間が必要です。仕方ないこととはいえ、一日でも早く会社の戦力として活躍してほしい…というのが企業の本音でしょう。

OJTとの違いの中でも触れたように、オンボーディングは企業全体で最適な育成施策を考え、実施するた、OJTと比較して、早期の即戦力化が可能です。

離職の抑制

業務を円滑に進めるためには、上司や同僚との良質なコミュニケーションが必要です。オンボーディングは、新規採用者が入社後、企業にすぐなじめるようサポートすることが目的のため、職場の良好な人間関係構築に役立ちます。例えば、オンボーディングで本人が会社に求めること、会社が本人に求めることを定期的に振り返り、必要があれば配置転換などを行い、早期の問題解決に努めます。これにより、本人がストレスなく業務を進めることができ、早期離職の抑制につながります。

採用にかかる費用の低減

採用には求人サイトに掲載するための広告費用、採用担当者の人件費、

離職抑制により、離職率が下がれば、採用にかける広告費用、担当者の人件費低減につながります。

部署間連携、エンゲージメントの向上

オンボーディングは、部署の枠組みを超えて企業全体で新規採用者をサポートする仕組みです。新規採用者だけでなく、周囲の社員の間でも良好な人間関係構築を行うことができます。

これにより、風通しのよい職場となり、業務上の伝達・連携が円滑に進むことが期待されます。

社員側(新規採用者本人)のメリット

定着の負荷軽減

オンボーディングは、新規採用者に早く企業に慣れ定着してもらうための仕組みです。例えば、業務上の課題に対し、誰に何を聞けば分かるのかを体系化、文書化して伝えたり、メンターを割り当て、本人の組織での振舞いに対して高頻度でフィードバックを実施したりといったことが考えられます。これらの取組みにより、本人個人にかかる負荷を軽減することができます。

やりがいの刺激

オンボーディングにより、本人に高頻度に働きかけることにより、企業が本人に期待することが肌で伝わり、業務に対するやりがいを刺激することができます。新入社員は会社に対し期待を持っている一方で、不安を感じてしまうもの。直接会社が本人に求める役割や、期待していることを伝えることで、本人のモチベーション向上につながります。

オンボーディングの4つのプロセス

オンボーディングを設計する際は、次の4つのプロセスを踏まえる必要があります。順番に見ていきます。

①目標の設定と成長プランの設計

新入社員ににどのような働きを求めるのか、面接などで聞き出した新入社員が会社に希望することをもとに、育成の最終的な目標を設定します。目標設定に当たっては、企業に早く慣れてもらうためのコミュニケーションの軸、必要な知識・スキルを習得する業務の軸の2軸で決めることが重要です。

目標設定が完了したら、その目標に到達するための成長プランを設計します。入社後1年程度を目安に、スケジュールとマイルストーンとなる中間目標を設定しましょう。例えば、入社当日、1週間、1ヵ月、3ヵ月、半年…のスパンがおすすめです。

②関係者とすり合わせ

プラン設計が完了したら、人事と本人の配属部署・関連部署と共有し、フィードバックをもらいましょう。共有する目的としては、関係者が本人を受け入れる態勢を整えること、プランの内容を複数人の視点で確認することにより、事前に改善すべき点を抽出し、見直しをはかることが挙げられます。

③プランに沿って実施

成長プランを策定し、関係者とのすり合わせが終わったら、次はプランを実行するフェーズです。とはいえ、最初からプラン通りにいくことなど滅多にありません。新入社員に対し、本人を取り巻く関係者全員が一丸となって、プランの実施をサポートしていくことが重要です。本人は段階を追って成功体験を積むことで実力をつけ、即戦力として成長していきます。

④実施内容の振り返りとフォロー

オンボーディングが終了したら、必ず振り返りを行いましょう。うまくいった点・いかなかった点をそれぞれ明確にしたうえで、今後入社する新規採用者のため、改良を行います。振り返りは定性面・定量面両面で実施するとよいでしょう。定性面においては、本人・関係者の意見をインタビューやアンケート等の手段で取得する、定量面においては離職率の低下やエンゲージメント調査のスコア向上への寄与の度合を確認することが考えられます。

オンボーディングプロセスを成功に導く5つのポイント

最後にオンボーディングを効果的に機能させるために、押さえるべき5つのポイントを解説します。どれも重要なポイントのため、チェックリストを作成し、実施できているか、関係者間で各プロセスの前と後で進捗確認する場を設けましょう。実施できていない場合、軌道修正をはかることが必要です。

事前準備を徹底する

株式会社リクルートキャリアが発表した『「中途入社後活躍調査」第2弾』(2019年4月24日公表)によると、新しく入社したメンバーのパフォーマンス発揮者の約8割は、⼊社前に⼈事とコミュニケーションを取っている一方、パフォーマンス不⼗分者は半数程度しかコミュニケーションを取っていないことが判明しています。

人事や上司は、入社前から新規採用者に接触し、受け入れる準備をしていることを本人に伝えるとよいでしょう。

人材配置を考える

オンボーディングに参画する社員の人選と個々の役割を慎重に検討することも重要です。、関係人員の選定を疎かにすると、本人が入社後に周囲の人間関係をうまく構築できず、オンボーディングが失敗に終わってしまうリスクが高まります。新規採用者が新しい組織の人間関係に早く馴染めるよう、性格的な相性や連携のし易さを念頭に適材適所で人選を考えましょう。

期待値を合わせる

業務を本格的に開始する前に、新規採用者のミッション、業務内容、期待する働きを本人と人事・上司の間ですり合わせましょう。企業・組織が期待することを一方的に伝えるのではなく、本人が組織に対して求めていることを確認し、期待値を合わせることがポイントです。

教育体制を整える

効率的かつ一定品質でオンボーディングを実施できるよう、人事は習得すべきアイテムを棚卸し、マニュアル等に落とし込むようにしましょう。社内の誰が担当しても、同じレベルの施策が実行できるよう、引継ぎも含めて標準化の仕組みを整備することが重要です。

フィードバックを行う

オンボーディングの進行期間中は、業務のマイルストーンを置き、成功体験を積ませながら、最終目標を目指すようプランを設計し、実施しましょう。マイルストーンに対して、本人のパフォーマンスがどうだったか、高頻度でフィードバックを行い、必要に応じて軌道修正をはかる。こうしていくことにより、最終目標に確実に近づくことができるでしょう。

まとめ

オンボーディングは、新規採用者を組織に定着させ、いち早く戦力化するためのプロセスです。オンボーディングをうまく活用することにより、離職率を低下させ、新規採用者を企業の業績に貢献できる人材に早期に育成することができます。

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