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【COLUMN】副業2.0時代の到来。副業人材の導入に期待することとその障壁とは?

前回に続き、今回も「副業人材の活用」をテーマに、個人側と企業側のそれぞれについて見ていきましょう。まずは、最近耳にすることも増えてきた「副業2.0時代」についてです。

「副業2.0時代」とは、いったい何でしょうか。

まず、よくきく「〜2.0」という表現。これは、どんな意味を持つのでしょうか。調べてみると、「新時代」「新様式」を表現するときに使われるものということなので、「副業2.0」とは、「副業にも新時代が到来した」という意味合いが込められているようです。

それでは、副業においてどういった「新時代」「新様式」がきたのでしょうか?

個人において「パラレルワークキャリア」、「副業」、「マルチステージ型人生」というキーワードが席巻したのは、2017年の流行語大賞にもノミネートされた「人生100年時代」という言葉の浸透が大きかったのではないでしょうか。

この言葉は、2016年に発売されベストセラーとなった人生100年時代を生き抜くための指南書「LIFE SHIFT(ライフシフト)100年時代の人生戦略」の中でロンドン・ビジネス・スクール教授のリンダ・グラットン氏とアンドリュー・スコット氏が提唱した言葉として知られています。本書のメインメッセージは、「これからは無形資産の価値に目を向け、長く現役として活躍できるよう、自助努力をしよう」というような内容でした。そのためのHow toとして取り上げられていたのが、「3ステージからマルチステージライフへ移行」の考え方であり、これは、「100年人生を生き抜くには、1つの職業を続けるだけでは困難であり、そこで有効なのが、『副業・兼業』や『学び直し』で自己のリ・クリエーション(再創造)を行うことである」、「1つの会社に留まり、その会社の仕事にだけ没頭するよりも『ポートフォリオ・ワーカー』という新たなキャリア像を目指すほうが有効であり、スキルという無形資産を築くことが重要」などと説かれていました。

「副業2.0時代」では、「副業」は単なる「お小遣い稼ぎ」「時間の切り売りで稼ぐ」という概念ではなく、「情熱を持って、人脈やキャリアを拡張する目的で取り組む時代」と言えそうです。

副業人材の導入に企業が期待していることは?

続いて、副業人材を活用する企業が増えてきている昨今、企業側は副業人材にどんなことを期待しているのでしょうか?当社独自の「副業人材の活用」についてのアンケートでは、「取り組みの背景や期待すること」についてお聞きしました。

<副業人材の活用について、「取り組みの背景や期待すること」を教えてください>

アンケート結果では「期待すること」として最も多かった回答が「人員強化のため(短時間でも手伝ってもらえる)」で、2番目に多かったものとしては「社外のノウハウ・ナレッジを取り込むため」でした。各社が人的リソースや知見・ノウハウの強化を副業人材に求めていることが分かります。また、時流を反映している回答とも言えそうなのが「採用力・企業ブランディング強化のため」、「働き方の多様化を促進するため」という回答で、各社の組織戦略の一貫として捉えている企業もありそうです。注目すべきは「高給人材の登用をするため」という回答で、「社外のノウハウ・ナレッジを取り込むため」に近い回答ではありますが、より高次元のスキル、ノウハウ、経験を求めていると感じます。これらの回答には、副業を解禁する職種や方針が色濃く反映されそうです。

副業人材の活用をしたい!…障壁ってなに?

一方で、当社独自のアンケート結果から、「副業解禁をしたいが出来ない」と考えている企業も一定数存在している事が分かりました。そこで「副業人材の活用を推進するにあたり、障壁となっていること」についても回答いただいています。

<副業人材の活用について、「取り組みの背景や期待すること」を教えてください>

結果として最も多かったのは「情報漏えいや企業秘密の保持など企業ブランドの毀損への不安」、「労働時間管理、健康管理など、労務体制の整備に対する不安」の2つで、副業人材を受け入れるに足る制度や体制に不安のある企業が多いようです。また次点として、「評価や人材マネジメントに対する難しさに対する不安」という回答も挙がっており、組織体制や評価制度に関しても未整備であることが副業人材の導入・推進を妨げているようです。

個人側は、副業に対して新しい価値を求め活躍の場を広げたい一方、企業側としては導入目的の精査や導入障壁に対する対応など課題も多そうです。

今後、多くの企業で副業人材の活用が進んで行ったときには、2016年8月に厚生労働省が発表した『働き方の未来2035』にあった「2035年には企業という枠が溶け、働き方はミッションや目的が明確なプロジェクトの塊となる」という指摘のように、様々な業務で特定のスキルを持った人が集まって活動するプロジェクト形式の働き方が主流となっていきそうですね。

次回もどうぞよろしくお願いします。

出典:

LIFE SHIFT(ライフ・シフト)―100年時代の人生戦略 (2016年)リンダ・グラットン, アンドリュー・スコット